デスクでできる、7種類のダンスをヒントにしたストレッチ
なぜ武術家は(そしてダンサーも)は力強く敏捷だが、重量感がないのだろう。筋肉を柔軟に伸ばすことを重視することがその理由の一つだ。長く伸ばすことで、引き締まった健全な筋肉が保たれる。
ちょっとしたストレッチは、誰にでも有益だ。朝、目覚めた時のストレッチやデスクの前に凝り固まっていた後のストレッチをされるのではないだろうか? ストレッチは筋肉への血流と脳への酸素を増加させるので、頭をスッキリさせ、活力が湧いてくる。
またストレッチは筋肉をリラックスさせる。悪い姿勢、肩こり、座りすぎからくる腰の痛みなどは、すべて筋肉が不自然に緊張しているためにもたらされる。時折のストレッチは、このような緊張をほぐす上で効果的だ。
では、何から始めようか? 中国古典舞踊の動作と、クラス前のウォーミングアップの両方からヒントを得た7種のストレッチを考案してみた。すべてデスクの前で行える!
次の2点は、忘れないでほしい。深呼吸してリラックスすること。筋肉を伸ばすことが目的で、緊張させることではない。
それでは、まず1つ目からスタート!
1. 首のウォーミングアップ
ダンサーがバーの前で行うウォーミングアップに似た動作を紹介する。首の動きの幅を広げ、頭・首・肩の位置を正す助けになる。
机か腹部の位置にあるものを両手で掴む。真っ直ぐに立ち、両足をくっつける。身体を動かさずに、首だけを右にできる限り向ける。顎は上下させずに常に平行に動かす。一呼吸したら首を正面に戻す。そして左にできる限り向けて繰り返す。
次に頭を前方に傾ける。リラックスして深呼吸することを忘れずに。頭のてっぺんを基軸として、ゆっくり円を描き、もとの位置に戻る。
首はデリケートなので、無理に動かさないように。コリや痛みを和らげるように両側に回す。
2.背骨のストレッチ(含腆)
中国古典舞踊の身韻の要素である「含」(ハン)と「腆」(ティアン)の動きだ。「含」には「抱く」意味があり、舞踊では胸部から上半身すべてを内側に丸める。「腆」では胸部と上半身を開いていく。中国伝統舞踊では、呼吸が動きを促す。この「含」と「腆」の動きを応用して、背骨をリラックスさせよう。
できる限り背筋を伸ばして椅子に腰掛ける。息を吐き、尾てい骨から始まり、上半身すべてが丸まり、頭が完全に内側に入るまで、徐々に背骨を丸めていく。
また尾てい骨から始め、息を吸いながら、徐々に背骨を伸ばしていく。胸が正面に来たら、天井に向かって胸を広げていく。頭を後ろに傾け、喉も伸ばす。「鎖骨にお日様があたっているのを感じて」とダンスの先生に言われたことがある。
好きなだけ繰り返す。呼吸に合わせて動くことを忘れずに。
3.ねじり(横拧)
上から見たときに腰と肩がXを描くようにねじる。他の言い方をすれば、腰を動かさないで肩だけを動かす。中国古典舞踊では、対極となる力の融合を重視するので、ほとんどの動きにこの「横拧」(ヘンニン)の要素が含まれている。
膝を揃えて背筋を伸ばして座る。右手を左ひざにあて、上半身をねじり左側を向く。腰は動かさない。その状態で息を吸う。息を吐きながら徐々にもとの位置に戻る。反対側で同じ動作を繰り返す。
4.肩と背中のストレッチ
クラスや舞台がなくても、ダンサーはこの部分をよくストレッチさせている。
最初の動きは、猫背に有効。ウォーミングアップとして、徐々に肩を広げていく。そして身体の後ろで両手を組む。腕を伸ばし、下に引っ張る。胸が開き、肩甲骨が下方に動く感じがするはずだ。さらに深くストレッチするには、組んだ手を身体から離して持ち上げる。
次のストレッチは、肩の柔軟性を高める。前腕を壁かデスクか床につける。息を吐きながら少しプレッシャーをかけながら身体を前方に傾ける。だれかが背中を押している様な感覚だ。背中と肩が伸びる感じがするはずだ。2~3回呼吸してからリラックス。繰り返す。
5.ハムストリングのストレッチ
ハムストリングとは、膝の後ろのくぼんだところにある太い腱。体操の授業でやったことのある人もいるかもしれない。ダンサーになりたての時に最初に行うストレッチだ。
足を肩幅に開く。さらにストレッチする場合は両足を揃える。前にかがんで床に両手をつける。最初は指先だけでも構わない。リラックスして深く深呼吸し、ハムストリングと背中の下の方をゆっくりと伸ばす。
次に両手を床につけたまま、息を吐きながらゆっくりと膝を曲げ、しゃがむ。リラックスしながら背中を丸くして、背骨をストレッチする。手は床につけたまま、徐々に元の位置に戻る。呼吸を忘れずに。
6.片足を開く(跨腿)
跨腿(クア・トゥイ)は中国古典舞踊特有の足の置き方。旋回や跳躍で用いられる足の動きだ。
この跨腿を模倣して、デスクに支えてもらいながら、腰や膝の関節を弛緩させる。同時に内転筋もストレッチ。真っ直ぐに立ち、手で右足をデスクに乗せる。太ももの位置が腰と並行するように置く。膝が上がるのは通常だ。
リラックスし、膝を徐々に下げていく。仕事中でもできるストレッチだ。両足を均等に伸ばすことをお忘れなく。
7.ランジ(弓箭步)
弓箭步(ゴン・ジャン・ブ)は弓と矢のステップと言う意味。ウェイトトレーニングのランジとしてご存知の方もいるかもしれない。ダンサーは通常、後ろの足は横に向ける。
長時間座っていると、腰の筋肉が固まりやすい。この部分を動かすと同時に、太ももの筋肉とアキレス腱をストレッチする。
まず始めに、デスクを掴み、片足を前に出し、ほぼ90度に曲げる。つま先は真っ直ぐに前を向くようにする。もう片方の足は後ろに引いて、母趾球(足の指より下のふくらみ)を床に押し付けて伸ばす。かかとが床につく方は、アキレス腱が長いことを意味する。
腰と上半身が真っ直ぐでないと、伸ばしたい筋肉がストレッチされない。この状態で2~3回呼吸した後、後ろの足をさらに後ろに引き、さらにストレッチする。反対側も繰り返す。
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千里の道も一歩から
―老子
最初から十分なストレッチができるわけではない。毎日やることで、健全な心身への道が開けてくると思う。頭がスッキリしないとき、是非、お試しを。ストレッチ前と後の写真など成果を記録して共有するのも一案!
ハッピー・ストレッチング!
ステファニー・グオ
神韻世界芸術団ダンサー